高価な万年筆をはじめて購入する際には、試し書きができるお店で購入することをオススメします。
ガラスケースに入った高価な万年筆を試す際には、販売員さんが万年筆をインクにつけ、筆記具メーカーのロゴが入った試筆紙にて書き味を確かめることが出来ます。しかし、実はちょっとした仕掛けが隠されています。しかも、そのヒミツはおそらくはじめての人には分かりません。そのため、これから紹介することを知らないと、買った後で「あれ、なんか違う? お店のときの方が書きやすかった…。」と後悔することになってしまうかもしれません。
そこで、今回は「1万円以上の万年筆をはじめて購入する際の試し書き時に気をつけるべきポイント」について紹介したいと思います。なるべく自分に合う万年筆を選ぶためにも、参考にしていただけると嬉しいです。
記事の内容をざっくり紹介!
- しかけ① 試し書きの万年筆は「つけペン」の状態
- しかけ② 試し書きの紙は、上質な紙
- コツは、気に入ったお店で相談して買うこと
- まとめ: 持ち帰ってから後悔しないために頭の片隅に入れてほしい! ギャップを無くす工夫を!
目次(ざっくり内容紹介)
1. しかけ① 試し書きの万年筆は「つけペン」の状態
万年筆を試し書きしたいという旨を店員さんに伝えると、ペン先をインクに浸してから渡してくれます。
これは、言わば「つけペン」状態で渡されていることです。万年筆の内部にインクを入れてしまうと、洗浄に時間がかかるのは勿論、USED扱いになることもあるので、「つけぺん」で渡されることは仕方ないことです。ただ、これをしかけ①と表現したことには理由があります。
その理由とは、ペン先とペン芯に余分なインクが相当付着しているということです。
この状態で書いた場合、書き味がめちゃくちゃ良いように感じ、インクがぬらぬらっと出てきてくれます。書き出しも遠慮なく出ますし、インクの出が多い・少ないを判断するのはかなり難しいです。それは、首軸からインクを通した状態とは大きく異なるためです。この書き味に憧れて購入を決意してしまうと、家に持ち帰った時に「何かが違う…。」となるわけです。(LAMYのSafariや、Pelikanのペリカーノジュニアはカートリッジが差してある見本なので、この限りではありません)
対処法① インクを吸い取ること
これを防ぐには、販売員さんに断ってから、ティッシュなどをあてて、ペン先に余分に付いているインクを軽く吸い取ることです。そうすれば、書き味は実際にインクを通した状態に近く、インクフローを正しく判断出来るようになります。ボトルインクにつけただけで、書けてしまうので注意が必要というわけです。
オマケですが、万年筆売り場で試し書きに使われたインクも、店員さんに聞いておくといいと思います。私が出かけるお店では、ペリカンのロイヤルブルーを使っていました。理由は、洗い流しやすく万年筆に残りにくく扱いが楽だからです。別のインクということで自己責任にはなりますが、書いたときの色も欲しいという場合には、ついでに聞いておくといいと思います。
2. しかけ② 試し書きの紙は、上質な紙
2つ目のしかけです。
それは店頭に用意がある試し書き用の紙は、筆記具メーカーや代理店が用意した上質な紙であるということです。お客さんに試し書きで「書きやすい」と感じてもらい買ってもらうという販売の思惑と、言ってみれば、メーカー自身が紙の重要性を認識しているからです。
ただし、これが理由でギャップが生じてしまう可能性は高いです。
普段使っている用紙は、常に上質な紙とは限りません。万年筆を使ったことがなかった時には、それほど紙の質にまでこだわってなかったと思います。普通のキャンパスノートやメモ帳?? コピー用紙?? いや、ダイアリーや手帳かもしれません。
対処法② 普段使う紙を持っていくこと
これの対処は、いつも使っている紙を持参して、そこに試し書きをすることです。
普段使っている紙に試し書きをすることで、書き味はもちろんですが用紙との「相性」も確認できます。ちなみに、この写真の紙は、パイロット社の万年筆を試し書きすると渡される紙です。測ってみたところ、この紙の罫線の幅は、9mmです。参考に他の例をあげると、私が使っているMDノートの方眼は5mm、一般的な大学ノートはA罫で7mm、B罫は6mmです。
普段と異なる紙で試し書きをすると、その罫線に合わせて< 普段書く字よりも大きくなってしまいがちです。そして、持ち帰った後に普段同様に文字を書いてみると、「文字がつぶれる…。試し書きではキレイに書けたのに」と違和感を感じることになります。こんなギャップを無くすためにも、普段使っている紙を試し書きに持っていくメリットは大きいと思います。
私の場合、万年筆の試し書きを行う際には、MDノート、モレスキン、キャンパスノート、3Mのポストイットなどを小さく切れ端にして持っていき、紙との相性を確かめています。これで満足出来れば、大抵の紙が書きやすく感じるからです。
3. 試し書きは、気に入ったお店で行うこと
試し書き以前の話にはなりますが、居心地の良いお店、店員さんを見つけてから購入することをオススメします。
私自身、ある決まったお店、しかもある店員でしか購入したことがありません。その店員さんは私が万年筆をはじめて購入するときに、わからなかったこと、曖昧なこと、漠然とした疑問などを聞いたところ、丁寧に解消してくれました。また税理士試験の万年筆を探していたことを伝えると、親身になって候補の万年筆をいろいろ紹介してくれました。上にあげたようなことも、「使いやすい万年筆を選ぶためにも是非」と言ってくれます。
逆に、居心地の悪さを感じたり、質問で曖昧な答えしか貰えない勉強不足の場所では、試し書きだけで買いたいとは思えません。これは、服を買いにいって、「なんでも似合いますよ」と勧められたのでは買う気が失せてしまうのと同様のことです。そういったショッピングも楽しみたいならば、多少通販よりは高くとも店頭を選ぶべきです。そういうところで購入すると、馴染みの文具店もでき、やはり楽しいものです。
☆ココ↓掘れ、ざっくざく!!
今回のココ↓掘れ、ざっくざく!!は、
持ち帰ってから後悔しないために頭の片隅に入れてほしい! ギャップを無くす工夫を!
です。
万年筆というと敷居が高く感じますが、普通の買い物と一緒です。ただ趣味性が高く、ほとんどの人が持っているものではないので、今回のことを知らなかったという人も多いと思います。買った後に使わなくなるという最大の失敗をしないためにも、頭の片隅に入れていただけると嬉しいです。自分に合う最高の一本に出会うキッカケに、もしこの記事がなってくれれば幸いです。
最後にですが、私の友人が購入した万年筆は、「ペリカン スーベレンM605」でした。すごく愛用して使っているようで、友人が常に持ち歩いてるのを目にすると私まで嬉しくなります。私も、あの万年筆は欲しいです(笑)