名前からして記録に特化型の万年筆用古典インク、ダイアミン(DIAMINE)の『レジストラーズインク (Regisirar’s Ink)』。
普通の万年筆インク(染料インク)は、水や光に弱いことが弱点です。しかし、今回の記事で紹介するDIAMINE(ダイアミン)の『レジストラーズインク』は、想像以上に高い耐水性を有した万年筆のインクでした。
ただし、レジストラーズ(=記録官の)という名を冠した没食子インクの性能は優秀な反面、リスクがあります。古典インクの簡単概要紹介も含めてレビューしたいと思います。
記事の内容をざっくり紹介!
- 没食子(もっしょくし)インク(=iron gall ink)とはどんなもの??
- 抜群の耐水性+急激な色変化(ブルー→ブラック)を楽しめるインク、DIAMINEのレジストラーズインク
- 危険度(リスク)も大きい。滓が発生しやすく乾燥は厄介。
- まとめ: レジストラーズインクを味方にするには、ほったらかしにせず「しっかり」と取り扱うこと!
目次(ざっくり内容紹介)
没食子(もっしょくし)インク(=iron gall ink)とはどんなもの??
書いているときに青みが強く、乾燥するにつれ黒変していくインクを「古典インク」又は「没食子(もっしょくし)インク」と呼ぶ。
没食子インク(iron gall ink)の原理を簡単に説明すると、「タンニン酸第一鉄を含んだインクが紙上に現れる → インクの成分であるタンニン酸第一鉄が空気中の酸素と結合 → 酸化してタンニン酸第二鉄(黒)固着+染料が退色」という化学反応の仕組みです。
つまり、鉄酸化合物を含む没食子インクと、黒っぽい青(ブルーブラック)ですが没食子酸化合物を含まない・ただの水性染料インクには成分上の大きな違いがあります。故に没食子インクを使う意味は、「鉄酸化合物が少しずつ酸化しながら徐々に色の変化(ブルー→ブラック)を起こし、書いたものに耐年性と耐水性、耐光性を備えさせる」ことにあります。
ただ、没食子インクの種類は減少傾向で6つと数えるほどになりました。しかし、そのメリットゆえ使うのを止められないインクです。(ちなみに、製法並びに歴史が古いことで古典インク、古典BB(ブルーブラック)と呼ばれることもアリ。)
抜群の耐水性+急激な色変化(ブルー→ブラック)を楽しめるインク、DIAMINEのレジストラーズインク
鮮やかな青が一転、グレーがかった濃紺への変化。そして、時間が経つにつれ、更に黒に近づく。
潔いまでの黒変速度を持つレジストラーズインク。キレイな青で書いた文字に目をやれば、10秒も待たずに色が褪せていく。30秒も経つと黒ずんだ青になり、その後も着実に黒に染まっていきます。日記をこのインクでつけ、真っ黒に近づいた古い筆跡とまだ青みを有した記録をのんびりと眺めるのが実にたのしいです。(乾燥も早く、裏抜けもありません。)
耐水性もなかなかのもの。ダイアミンのレジストラーズインク、GOOD!
筆記直後では染料が残ってるから耐水性がイマイチだけど、少し待てば◎!!
一番上は特に流れやすいパイロットの色彩雫、2番目は通常の染料インクなのに流れにくい特徴を持った異端児・パイロットのブルーブラック、3番目は旧版(新型は通常の染料インクへ変更)・モンブランのミッドナイトブルー(古典BB)、4番目は顔料インク・プラチナ万年筆のピグメントブルー、そして、最後がダイアミンのレジストラーズインクです。
耐水性のレベルが圧倒的に高く、顔料インク(ピグメントブルー)と比べても遜色がないほどです。インクの中に鉄分が圧倒的に多く、染料がほとんど溶け出していないのもスゴイ点です。このインクであれば、宛名書きに使っても役目を果たしてくれそうです。
期待を裏切らなかった耐水性と変わりゆく色合い。どの没食子インクよりも古典インクらしい最たるインクです。
危険度(リスク)も大きい。滓が発生しやすく乾燥は厄介。
インクが内部で乾燥すると万年筆に多大な影響が??
レジストラーズインクは万年筆のコンバーターにしょっちゅうこびりつきます。実は、このプッシュ式コンバーター(CON-70)は2個目です。一つ目のコンバーターは、インクを補充するためプッシュボタンを押したところ、押し込んだ状態で動かなくなり、結局そのままの状態で保管(完全乾燥)しています。
未だ古典インク洗浄時の必須といえるアイテム・アスコルビン酸(ビタミンC)を購入していない為、コンバーターが使えるようになるかは正直分かりません。はじめてこのような状態にした最凶のインクです。(コンバーターが使えなくなり、吸入式万年筆には怖くて入れることが出来ません。)
番外編: 没食子インクを入れたまま、一ヶ月使ってなかったLAMY2000の先端が腐蝕(さび)てしまった…。
メンテナンスを怠り、古典インクが付着した状態を続けていたら腐蝕した。
古典インクだったモンブランのインク・ミッドナイトブルーをLAMY2000に入れた状態で放置していたところ、金属製のフードが腐食して削れたようになってしまいました。ただ、幸いなことにペン先部位への影響は少なく、書き味に変化はありませんでした。今はインクにミッドナイトブルーを相変わらず入れながら、使う頻度を上げ「良く使う万年筆」に返り咲きました。
しかしながら、没食子インクが「酸性」だったことを再認識した今回の不祥事。大事な万年筆・LAMY2000の削れた部位を見たときにはショックだったので、これを教訓にしっかりとメンテナンスしなければと思っています。(古典インクの種類が減るわけです…。)
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☆ココ↓掘れ、ざっくざく!!
今回のココ↓掘れ、ざっくざく!!は、
レジストラーズインクを味方にするには、ほったらかしにせず「しっかり」と取り扱うこと!
です。
イギリスの老舗(1864年創業)インクメーカー・ダイアミンが伝統的な製法で作った没食子インク。
コンバーターが使えなくなる、先端が腐蝕するという2度のハプニングにあった没食子インク。この他の古典インクとして、ペリカンのブルーブラックインクやローラー&クライナーのインクは気に入ってるのですが、同様のトラブルがないことを祈ります。万年筆初心者を抜けたと油断していたところに起きたので、使ってない万年筆に古典インクの入れっぱなしをやめるよう、意識を改めようと思います。