私の誕生日と型番を同じくする熱望していた万年筆(ペリカンのスーベレンM320)を手にしました。
本格万年筆(10本)購入時を振り返りつつ紹介する企画も、この万年筆で6本目の節目となりました。今回紹介する万年筆スーベレンM320は、色 + ペリカン+ 数字の縁で購入を決めた「死ぬまでに絶対使ってみたかった万年筆」といえます。それでは、スーベレンM320(オレンジ軸)の購入時の思い出、この万年筆の特徴・レビューを振り返りつつ書いていきたいと思います。
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記事の内容をざっくり紹介!
- スーベレンM320(オレンジ)がついに振り向いてくれた思い出
- オレンジ色の小柄なボディが可愛い! ペリカンのスーベレーンM320
- ふわっとした書き心地の気まぐれガール(万年筆)を宥める!
- まとめ: 遊ぶための優雅なオレンジ万年筆! ふわりと戯れるのが愉しい!
目次(ざっくり内容紹介)
スーベレンM320(オレンジ)がついに振り向いてくれた思い出
これまでに購入した5本の万年筆。
黒い万年筆が多く、あくまで実用性を重視した堅実、ある意味、「王道」のような道を通って手にしてきたのではないか、と考えています(カスタム74→カスタム742→スーベレーンM800→ヘリテイジ91→キャップレス・マットブラック)。 どの万年筆にも面白みがあり、気に入っている存在です。書くという行為を最大限愉しませてくれる手放せない道具たちです。
ここで、話は少しだけ戻ります。
20歳の記念に手に入れる万年筆は、何がいいかな?と熟考してました。その中で 意中の万年筆を絞り込む際、スーベレンM800が欲しい、と強く思わせた記事がありました。
万年筆好きに知らない人はいない、フルハルターの森山さんがスーベレーンについて書かれた記事。 私もぜひ一度は訪れてみたいお店、フルハルター。そのフルハルターの森山さんが「ナンバーワーン!」と絶賛していたM800に憧れ、ただ純粋に書いてみたくなりました。
そして実際に店舗へ行き、M800を試し書き。「あ、これスゴい…。」と書いた途端に感動。絶妙な塩梅の万年筆M800を手に入れウキウキです。書くのが楽しくてしょうがない。これからはフルハルターさんの万年筆評価を絶対的に信用しようと、姿勢を正しつつ改めて例の記事を再読。M800を買って良かった、自分がそれを持っている・使ってるんだ! という所有欲が存分に満ちました。
しかしそれではまだ物欲が収まらず、他のスーベレンの項目も読んでいたところに気になる記載がありました。
これが私の最愛のモデル。 といっても遊び心で選んで欲しい。この小ささは可愛がらずにはいられなくなるのだが、じっくりと文章を書くのには向いていないと思う。こんなに小さく細いボディを握り続けて書くのは疲れすぎるであろうから……。手帳やメモ書きの目的であれば十分なモデルであるが、ペン先の腰が柔らかい為、少しの筆圧でもペン先が開き、太く、インクが沢山出てしまう可能性が大きいことを十分考慮しなければならない。
またこの小さなモデルに<BB>の極太ペン先をつけて使う、なんと洒落た奴だ! なんと贅沢な奴だ! と私は思う。そんな意味で “遊び心” で何本目かに選んで欲しいモデル。
私はこのM300を「ヒュプシュ」という愛称で呼んでいる。
フルハルター スーベレーン M300
森山さんの最愛モデル。
いつか手に入れたい万年筆リストに、すぐさま入りました。また、調べていて、この型番M300にはM320という限定モデルが存在することを知りました。320という私が大切にしている誕生日と同じ型番に縁を感じました。そして、過去のラインアップを見ていたところ、ホントに心を揺さぶるオレンジ軸があったことを見つけました。(2007年が緑、2009年が赤、2012年ホワイト。)
大好きなオレンジ色 + 型番の数字との縁。
見つけた時には、なるべく手を出すと決めました。実は、私が欲しいと思ったM320のオレンジ軸は、2004年に限定発売されたものだったからです。欲しいと思っていたのは2011年になってからだったので、当然、普通の万年筆売り場に残っているはずがありませんでした。
しかし、どうしてもこの万年筆が欲しかったので、ヴィンテージや中古の扱いがあるお店を探すことにしました。当時知っていて、候補になったお店は、EUROBOXとペンクラスターの二つでした。WEBショップで稀に在庫ありとなっていることがあるので、一縷の望みにかけることにしました。
そんな折、一度、ユーロボックスに在庫が入った時にはタイミングが合わず逃してしまいました。
逃した魚は大きい。欲しかったのに…、と悔やみ続けました。待つことM800入手以来1年あまり、私の誕生日という運命的なタイミングで、遂にあの娘(万年筆)が顔を出しました。M320のオレンジがEUROBOXの在庫に追加されていたのです。
逸る気持ちをなんとか抑えて、商品詳細も読みました。そこには、「ペン先は、フルハルター森山氏の研ぎによるもので、カモノハシ状態のBB。全く未使用品ですが、今度店頭で試し書きをすることがあります。」とありました。あの森山さんが「なんて贅沢なやつだ!」と語ったスーベレン300番台、しかも、あの森山さんが研ぎだしたペン先、正に私が理想としていたそのものでした。これは神様が与えてくれたチャンスと思い、すぐさま購入しました。
オレンジ色の小柄なボディが可愛い! ペリカンのスーベレーンM320
M800と比べると、可愛らしい小ささ。
うっすらと透けるオレンジマーブルのきれいな軸。角度によって表情を変えてくれます。この小さな宝石のような万年筆には、小さいながらも立派なピストン吸入機構があります。この万年筆の精密さは、他の大きなシリーズと比べても決してひけを取らない、否、よりしっかりと作られた立派なものです。
また、遊びを楽しむためのエッセンスとしてインクは一生懸命探しました。
発色がいいオレンジ色のインクを探し、はじめに見つけたのはボディとも合うブングボックスオリジナルのフレッシュ三ヶ日みかんです。(その後、2013年限定のペリカンのエーデルシュタイン・アンバーという、より理想に近かかったものを見つけました。)
関連記事: 琥珀色の万年筆インク エーデルシュタイン・アンバー(ペリカン)で、太古の昔と自分の気持ちを重ねて想いを馳せる!≡
ふわっとした書き心地の気まぐれガール(万年筆)を宥める!
BBのペン先はとても軟らかく、手で書いているような淡い感覚を感じさせる不思議な万年筆です。
ペンは軽く小さいにもかかわらず、極太字の滑らかさが合わさる体験したことがない書き心地です。表現するのがかなり難しいのですが、羽根でなぞるような感覚で想像していただけるでしょうか。
しかし、このふんわりとしたような、ふにゃふにゃなぞる感触を愉しめるのは万年筆に慣れた後だと思います。
実際、私も手に入れた当初はかなり扱いにくい万年筆だと思っていました。また、ペンクリニックへ出した際に、このM300系のペン先は、非常に小さく、薄く、ぐらつきやすいという特徴があることを聞きました。また、BBという太いペン先ということもあり、少しひねったり筆圧をかけるだけで、「ひっかかり」のようなうまく当たらない感覚になります。
気まぐれなこの万年筆は、書き手が間違えると途端に不機嫌になるような、繊細でデリケートなペン先です。購入当初はじゃじゃ馬で使いにくかったのですが、万年筆の書き方(筆圧を落とす)に慣れるにつれ、M320との相性が良くなりました。
遊び心に溢れたツンデレちゃん、ものすごく愛らしい私にとっては「お宝」万年筆です。
☆ココ↓掘れ、ざっくざく!!
今回のココ↓掘れ、ざっくざく!!は、
遊ぶための優雅なオレンジ万年筆! ふわりと戯れるのが愉しい!
です。
君(M320)と出会えて、ホントに良かった。
私にとって、「死ぬまでに絶対使ってみたいペン」はこの万年筆です。ちなみに、このフレーズ「死ぬまでに絶対使ってみたいペン」とは、趣味の文具箱vol.25の副題です。このテーマのユーザーの一人として誌面に掲載していただいたので、フレーズを使ってみました。他のユーザーとの縁も広げてくれた、良いものをいろいろ齎してくれる万年筆だと思っています。